つづく雨読

text by T


311の地震津波の被害をもろに受けた「旧UDOK候補」の場所。
そう、実は、"旧"になってしまった...


ちょうど1ヶ月後の411、天候の急変から雷雨となり、再び大きな地震があった。
再び断水し、さらに停電。


会社から家へ帰る途中、御代坂から見下ろした小名浜のまちが、夜の海のように真っ暗だった。
初めて、小名浜のまちを少し怖いと感じたのを覚えている。
週末港へいくと、周りの道の瓦礫も少し片付いて、倉庫に突っ込んでいた車も撤去されていた。
けれど、建物の構造や壁や屋根は、相次ぐ余震にもう疲れきっていた。
「前よりひどいかも、、やばいかもしれない、、、。」


それから数日後、「残念ですが、取り壊すことになりました。」と大家さんから連絡が入った。
振り出しに戻った...場所づくりをあきらめるか、先延ばしにするか、
少し話し合った。




と、そこで「まげでらんねぇ」のが雨読のスピリット!
場所づくりはあきらめたくない!!
すぐに、次の候補物件を探した。



けれど、津波の被害を受けた海辺の物件はどこも厳しい。
見慣れた海辺の建物には、要注意の黄色い張り紙や取り壊し承諾の張り紙が多くあった。
「ここもあそこも取り壊されるのか、、、」
あらためて、街の風景が失われるということをリアルに感じた。



「かつての街は失われるかもしれないけれど、自分たちのやりたいことまで失う必要ないよな。」
結局、そんな気持ちが“雨読”の気持ちなんだと、なんとなく腑に落ちた。
いくつか不動産屋さんもまわり、港から徒歩2,3分のところにある“小名浜の銀座”
「本町通り商店街」の一角に目を付けた。
そこは、かつての港町の賑わいをいまに伝えることが難しい地方のシャッター通り
子供の頃からの思い出は詰まりすぎているそこも、地震の被害で、要注意の張り紙も少なくない。


前回の場所とは少しコンテクストも空間も違ったものになるだろう。
そこにはじめは違和感もあったけれど、スケッチしながらイメージを膨らませるにつれ、
新たなイメージも降ってきた。





ここに、雨読の根を張るのもいいかもしれない。
自然と腑に落ちてきた。


こんな風に雨読はづつきます...